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「そんなに怒ることないだろ?」
トーストをかじりながら、ダンテが言う。リオンはそっぽを向きながら、カモミールティーを飲んでいた。
「心配しなくても大丈夫だ、見てないし。見るほどの胸がな」
リオンはダンテにばふっ、とクッションを投げつけ、真っ赤になって叫んだ。
「最低!」
彼はクッションを腕で阻み、
「すぐ物を投げる人間は忍耐力が足りないんだ。精神を鍛えろ」
いけしゃあしゃあと何を言うの、この人。一番人に忍耐力をしいているくせに。リオンはむうっとしたまま朝食を終え、皿を片付けた。ダンテはすでに白衣を羽織って、鞄を持っている。
「俺は先に行く。勘繰られないよう時間差で来いよ」
そちらが強引に同居に持ち込んだくせに、何を言っているのだ。
「わかってる。早く行ったら」
ツンとした声で答えたら、ダンテが後ろから近づいてくる気配がした。
「おい、綿毛」
「私はそういう名前じゃありません」
振り向いたら、いきなり唇を奪われた。ちゅっ、と軽い音がして、びくりと身体が跳ねる。
「!」
「じゃあな」
彼は何事もなかったかのように踵を返す。開閉したドアの音は、ダンテの傍若無人さを表すように、大きな音を立てる。
──また勝手にキスされた……っ!
リオンは唇を押さえ、真っ赤な顔でううう、と唸った。
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