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カタン、カタン。トラムが坂を登っていく。リオンは街の景色を眺めながら、手すりに掴まっていた。
学院行きのトラムなので、見渡すかぎり制服で埋まっている。その中でひときわ目立っているのが、すらりとした体躯に白衣を纏うダンテだ。
彼はトラムの入り口付近に立ち、思索にふけるように目を伏せている。
長いまつげが、トラムが揺れるのに反応して震えていた。両手は白衣のポケットに収まっている。周りの女の子たちは、?を染めながらダンテをちらちら見ていた。
──ほんと、黙ってれば綺麗なのに。リオンの視線を感じたのか、ダンテがこちらを見た。
「!」
リオンは慌てて窓の外に視線を移す。と同時に、運転手が「次は、フラウィザード学院です」と告げた。トラムが停車すると、ぞろぞろ生徒たちが降りていく。
ダンテはなぜか降りずに、入り口付近に立ち止まったままだった。リオンは訝しげに思いながら、彼の脇をそろそろと通る。がし、と腕を掴まれ、リオンはびくりとした。
「な、なにっ」
「なんで見てた」
紅い瞳に見つめられると、急激に体温が上がる。
「なんでって、あなた、一人だけ白衣だから目立つな、って」
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