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教室に入ったリオンは、ダンテと目を合わせずに席に着いた。勝手に人のうちに住み着いて、勝手にキスしてきて、見るな、ってなんなのだ。
「ねえ、リオン。試験結果どうだった?」
前の席の女の子に尋ねられ、リオンは内心ぎくりとした。ダンテがちら、とこちらを見たのがわかる。──なによ。そっちこそ、見ないでよ。
「……E判定、だった」
「え、あ……そうなんだ」
気まずげに頷かれ、リオンは顔を赤くする。ああ、明らかに気を使われてる──もしかして、このクラスでE判定だったのは、私だけなんじゃ。悶々と考えていたら、教師が入ってきて、授業が始まった。
「一人ずつ前に出て、私が出した蔓を弾くように」
生徒たちは、ずらっと列をなした。リオンは一番後ろに並んだ。ダンテはというと。
「ダンテはいい。必要ないだろう」
教師にそう言われたため、席について窓の外を眺めている。
(何かあるのかな)
そんなことを考えていたら、すぐに自分の番になる。教師は真面目な顔でこちらを見て、
「オランジュ、わかってるな。集中してやるんだぞ」
「は、はい」
リオンは手のひらをかざし、足元にたんぽぽの花を出現させた。ふわ、っと花が光る。教師の足元に咲いたダリアも光り始めた。
蔓がこちらに伸びてくる。リオンはそれをはたき落とす──つもりだったが、蔓が短すぎて空振りに終わった。教師が落胆のため息をつき、周りからくすくす笑う声が聞こえてくる。リオンはかあっ、と赤くなる。
きっと、ダンテも笑ってる。いたたまれなくて俯いたリオンに、教師が席へ戻るよう言った。
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