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授業が終わると、教師がリオンを手招いた。
「オランジュ、ちょっと来い」
手招かれたリオンは、教師と共に廊下に出た。教師は腕組みをし、厳しい顔でリオンを見る。
「前回の試験だが、E判定なのはおまえだけだった。このままだと、進級試験に関わるぞ」
「は、い」
「実技がなんとかなれば、筆記は問題ないからいけるだろう。課題はわかってるな?」
「攻撃にあっても花びらを散らさないこと……」
頭ではわかっている。だが、攻撃を受けると、いつも身体がこわばってしまうのだ。リオンは、花魔術の勝負で、誰にも勝ったことがなかった。
「おまえの場合、花の性質上難しいとはわかってるが、コントロールも力のうちだからな」
「はい」
「頑張れよ」
教師はリオンの肩を叩き、廊下を歩いていった。リオンはため息をつき、踵を返す。室内に入ると、教室中の視線がばっ、とこちらに向いた。リオンはびくりとして立ち止まる。
──え?
「E判定だって」
「ひでえな」
「私なら自主退学するけど」
「国のお金使って勉強してるんだもんね」
ひそひそと話すクラスメイトたちの中、リオンは赤い顔で席に着く。──消えて無くなってしまいたい。
率先して馬鹿にしてきそうなダンテは、無関心な様子で本を読んでいた。──内心、才能ないならやめろ、って思ってるんだろうな。彼はきっと、消えたいと思ったことなんてないだろう。
ダンテは才能の塊だ。くらべてリオンは──なんの役にもたたない、ただの綿毛なのだから。
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