ふわふわ×トゲトゲ

6/8
前へ
/162ページ
次へ
 授業が終わると、教師がリオンを手招いた。 「オランジュ、ちょっと来い」  手招かれたリオンは、教師と共に廊下に出た。教師は腕組みをし、厳しい顔でリオンを見る。 「前回の試験だが、E判定なのはおまえだけだった。このままだと、進級試験に関わるぞ」 「は、い」 「実技がなんとかなれば、筆記は問題ないからいけるだろう。課題はわかってるな?」 「攻撃にあっても花びらを散らさないこと……」  頭ではわかっている。だが、攻撃を受けると、いつも身体がこわばってしまうのだ。リオンは、花魔術の勝負で、誰にも勝ったことがなかった。 「おまえの場合、花の性質上難しいとはわかってるが、コントロールも力のうちだからな」 「はい」 「頑張れよ」  教師はリオンの肩を叩き、廊下を歩いていった。リオンはため息をつき、踵を返す。室内に入ると、教室中の視線がばっ、とこちらに向いた。リオンはびくりとして立ち止まる。  ──え? 「E判定だって」 「ひでえな」 「私なら自主退学するけど」 「国のお金使って勉強してるんだもんね」  ひそひそと話すクラスメイトたちの中、リオンは赤い顔で席に着く。──消えて無くなってしまいたい。  率先して馬鹿にしてきそうなダンテは、無関心な様子で本を読んでいた。──内心、才能ないならやめろ、って思ってるんだろうな。彼はきっと、消えたいと思ったことなんてないだろう。  ダンテは才能の塊だ。くらべてリオンは──なんの役にもたたない、ただの綿毛なのだから。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加