ふわふわ×トゲトゲ

7/8
前へ
/162ページ
次へ
 お昼休み、リオンは売店でお昼ご飯を買い、屋上に向かった。はたはた揺れる校旗を眺めながら、サンドイッチを食べる。特製のコーヒーを一口飲み、ふう、と息をついていたら、屋上の扉が開いた。姿を現したのはダンテだ。 「おまえ、またここにいたのか。寂しいやつだな」  ダンテに寂しいとか言われたくない。彼だって、友達らしい友達はいないはずだ。リオンとは別の意味で、ダンテは浮いていた。彼は優秀すぎるがゆえ、リオンはみそっかすがゆえに浮いているのだ。リオンはぷい、とそっぽを向いた。 「別にいいでしょ。何か用」  彼は白衣の裾をはためかせながらこちらへ歩いてきて、隣に座った。ふわっ、と薔薇の香りが漂って、肩が触れ合わんばかりに近づく。その距離の近さが気まずくて、リオンは彼からじりじりと離れる。ダンテはリオンが持っている水筒に目をやり、 「それは?」 「たんぽぽのお茶、だけど」 「一口よこせ」  なぜそんなに偉そうなのか。生まれた時から仁王立ちしていたのではないか、この男は。リオンがコーヒーを差し出すと、ダンテはそれを一気に飲み干した。唇をなめる動作にどきりとする。艶のある黒髪も、ルビーみたいな紅い瞳も、思わず見とれてしまうくらいにきれいだ。 (やっぱり、かっこいい、な……) 「美味いな。おまえ、花魔術(フラウィザード)の才能はないけど、お茶を淹れる才能はあるんじゃないか。砂つぶほども役に立たないが」 「美味しい、だけでいいじゃないの」  どうしていちいち嫌味を言うのだ。かっこいいのに、性格が悪すぎる。ダンテは菜園を指差し、 「あれ、おまえが育ててるのか?」 「うん、自然栽培で植物を育てたくて」 「なんのために。この学院には百花の魔術師たちがいるのに、わざわざ栽培する意味がわからない」 「なにって、魔法が使えない人たちは、そうやって植物を育てるのよ。それが自然なの」 「おまえは一応魔術師だろ、E判定の綿毛だけど」  リオンはムッとしたあと、 「別にいいじゃない。育てるのが楽しいんだから」  ダンテはふん、と鼻を鳴らし、リオンが持っているサンドイッチを指差した。 「それ、美味そうだな。一口くれ」  伸びてくる手をさっ、と避ける。 「いや。自分で買って」 「綿毛のくせに偉そうだな」
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加