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その直後、強い香りが漂って、ダンテの足元に大輪の薔薇が咲いた。あっ、と思う間も無く、出てきた蔓にサンドイッチを奪われる。
「ああっ!」
彼はくすくす笑いながら、おかしそうにこちらを見ている。リオンは唇を噛んで、足元にたんぽぽを出現させた。ダンテはおかしそうな声で、
「それでなにする気だ? ふわふわするだけだろ」
「ふわふわで窒息しちゃえ!」
リオンはダンテの真上に綿毛を出現させ、そのままズボッ、と彼の頭に落とした。綿毛をかぶったダンテが、ふるふる頭を動かし、こちらをにらんだ。顔部分だけが、綿毛から覗いている。
「ふふっ、雪だるまみたい」
思わず笑うと、視界がふっ、と暗くなった。のち、大量のバラの花びらが落ちてくる。
「ぷは!」
リオンはバラの花びらを退けながら、ダンテをにらんだ。彼は肩をすくめ、
「おまえ、意外と負けず嫌いだな。からかっただけだろ」
「……どうせ、私のことなんかバカにしてるくせに」
ダンテはロズウェル家のエリートだ。対して、リオンはただの雑草。たんぽぽは、百花の中でも力が弱く、ただ遠くへ飛んで繁殖するくらいしか能がない。
「ダンテに比べたら、それこそ砂つぶみたいな力しかないもんね」
ダンテはじ、とこちらをみて、立ち上がる。
「ちょっと来い」
「え?」
ぽかんとしながら見上げたら、彼が舌打ちした。
「早く」
「わっ」
ぐい、と腕を引っ張られ、つんのめりそうになりながら立ち上がった。
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