絵本×キス

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絵本×キス

 ダンテがリオンを連れて行ったのは、花魔術院内にある図書室だった。図書室に入ると、生徒たちからチラチラと視線が注いだ。その視線は、リオンの横に向かっていた。  ダンテは容姿が優れている上に有名人なので、どこにいても注目を集める。ダンテに注いだ視線は、流れ弾のごとくリオンにも向いた。  なんであんな子が一緒にいるの? みんなの視線はそう言っていた。それは、リオンが一番尋ねたいことなのだが。 「ねえ、いいの? 一緒にいるとこ見られたらよくないんじゃ」  小声でダンテに尋ねてみる。 「もういい。面倒になった」  彼はそんなことを言いながら、画集のコーナーへと向かう。そうして、一冊の本を手にした。 「なに? それ」  ダンテが手渡してきたのは、どうやら絵本のようだった。黒と赤を基調とした、モノトーンの絵が特徴的だ。タイトルは──。 「ばらものがたり?」 「読んでみろ」  促され、リオンはページをめくった。片側にイラスト、片側に文章が載っていた。イラストに目をやったあと、文面をなぞっていく。     
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