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そこまで読んだリオンの耳に、チャイムの音が聞こえてきた。顔をあげると、図書室にいた人々はまばらになっていた。いつのまにか、随分時間が経っていたようだ。
図書カウンターに座っていた女の子が、そろそろ閉館です、と言う。リオンは慌てて絵本を閉じて棚に戻し、ダンテと共に図書室を出た。
「ねえ、あの絵本、なんだか」
ダンテに似てるね、と言おうとしたら、彼が先に口を開いた。
「童話ってことになってるが、これは、ロズウェルの呪いをモチーフにしてる」
やはりそうなのか。
「でも、ロズウェルのことは秘密なんでしょう?」
「ああ。これを書いたのは、俺の身内──大叔父なんだ」
ダンテは窓の向こうに目をやって、オレンジ色の夕陽を見つめた。
「その人は俺と同じく、薔薇の呪いにかかってる。かなり重症化していて、いつ命が尽きるかわからない」
だから、と彼は続ける。
「描かずにはいられなかったんだろう。ロズウェルも、大叔父の気持ちを汲んで、描くことを許した」
遺伝する呪い。力の代償。それがどれほどの重荷なのか、何も持たないリオンにはわからない。
あの魔女、おまえに似てないか、とダンテが言った。
「え……」
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