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ダンテは紅い瞳をこちらに向けた。夕陽に照らされた彼は、とても綺麗だった。男の人に綺麗というのは、おかしいかもしれないが──目が、離せなくなる。いつもと違う雰囲気のダンテに、リオンの心臓が、どくどく音を立て始める。
「だ、から、キスしたの?」
「ああ。たんぽぽの綿毛が、薔薇の呪いを緩和する──それは確かなんだ」
「でも……呪いが解けたわけじゃないんでしょう?」
「アザが消えないからな」
ダンテはそう言って、自身の手のひらを見つめた。
「だいたい、すぐ解けるようなら、誰も苦労しちゃいない」
じゃあ、呪いを解くためには、ずっとキスし続けなきゃならないってことなんだろうか……?
「な、なんとかならないの? 手術で取り除くとか」
「外科的な処置をしようとした先祖は何人かいたらしい。だが、棘に阻まれ不可能だった。少しでも触れようとすると、棘が心臓を突き破る。実際、それで死んだ人間もいる」
リオンはごくりと息を飲んだ。つまりは──常に死と隣り合わせなのだ。
「少なくともおまえは、今まで誰もなし得なかった薔薇の棘の緩和を成功させた。だから、その点だけは自慢しろ」
リオンは目を瞬いた。これは、ひょっとして。
「……慰めてるの?」
「事実を言っただけだ」
ダンテはそう言って、今日の夕飯はシチューがいい、と付け加えた。
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