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夕飯の後片付けをしながら、リオンはちら、とソファに座るダンテを見た。背もたれに身体を預け、猫科の動物みたいにくつろいでいる。偉そうだし、いつもリオンを綿毛だって馬鹿にするくせに、あんなこと言うなんて思わなかった。
わざわざ図書室まで連れて行って、絵本を見せるなんて。
たんに、リオンに協力させるためだけかもしれないけど。視線があいかけたので、慌ててそらす。
「なんだよ」
「べ、べつに」
棚にあるふきんをとろうと背伸びしたリオンの背後に、ふ、と圧がかかった。かすかに、薔薇の匂いが香る。ダンテに後ろから抱えられているような体勢に、ぶわっ、と体温があがった。
「っ!」
「ほら」
「あ、ありがとう」
差し出されたふきんを、リオンは目をそらしつつ受け取った。ダンテはじっとこちらを見て、
「おまえ……なんか変だぞ」
「あなたに言われたくない」
「脳に綿毛が詰まったのか?」
「そんなわけないでしょ!」
リオンが抗議したら、ダンテが笑った。その笑顔にどきっ、とする。──わ。意地悪じゃない、本物の笑顔。
ダンテは風呂に入る、と言って浴室に消えた。リオンはドキドキしている胸を押さえる──私ばっかりが、振り回されてる。リオンはため息をついて、渡されたふきんで皿をぬぐった。
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