天才×凡人

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 教室に、カツカツとチョークが鳴る音が響いている。ただ、誰かが書いているわけではなかった。教師は壇上に椅子を置いて腰掛けたまま。彼の足元に咲いたアマリリスから、蔓が伸びていて、チョークに絡みついている。教師は、蔓でチョークを操っているのだった。  いま行われているのは、「蔓を自在に使って板書をする」という授業だ。  リオンは、ちょろっと生えた蔓を使い、羊皮紙に板書を写していた。必死な形相でペンを走らせていると、チャイムが鳴り響いた。周りの生徒たちは、その瞬間席を立ち、羊皮紙を机に置いて、教室を出て行った。  まだ板書を終えていないリオンは、続きを書こうとしたのだが──。  教師が伸ばしてきた蔓に、羊皮紙を奪い取られる。 「あ、あっ」  リオンは慌てて羊皮紙を追いかけた。 「タイムアップだ、リオン・オランジュ。また補習だな」  教師が呆れた様に眉をあげる。 「まったく君ときたら、あらゆる実技において補習だとは。嘆かわしい」 「っ」  リオンはかあっ、と赤くなった。  その時、白衣が傍をひらりと通り過ぎた。ダンテ・ロズウェルである。彼は教師に向かって、 「先生、ここの解式、間違ってますよ」  すっ、と羊皮紙を差し出す。教師がとなにっ、と目を剥いて、羊皮紙に目を落とした。
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