紅薔薇×黄薔薇

6/9
67人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
「ミルテさまは……病状が悪化していまして」  家政婦が口を濁す。ダンテはハッとした。 「まさか、植物化してるのか」 「はい……あ、ダンテさま!」  ダンテは家政婦を押しのけ、屋敷の中に入った。足早に廊下を通り、奥の部屋へ向かうダンテを、リオンは慌てて追いかける。  ミルテの部屋の入り口に、立ち尽くすダンテの背中が見えた。薔薇の蔓が足もとに伸びてきている。  ダンテの肩越しに、薔薇の蔓に覆われたミルテが見えた。ベッドに寝かされて、微動だにしない。リオンは息を飲んで、目の前の光景を見つめた。ダンテはミルテに近づいていき、その顔を覗き込む。  ミルテの身体は、蔓に覆われてほとんど見えない。顔だけはまだかろうじて見えているが、瞳は固く閉ざされ、まるで人形のようだった。 「リオン」  ダンテに手招かれ、リオンはそちらに向かう。変わり果てたミルテの姿を見下ろして、呆然とつぶやいた。 「これは……なに?」  部屋を覆う薔薇の蔓。死んだように横たわる、ダンテの大叔父。ダンテは、ミルテの顔を見下ろし、淡々と言った。 「植物化だ。呪いが末期まで進行するとこうなる。こうなったら……薔薇の棘が心臓を食い破るまで何もできることはない」 「そんな……」 「俺の末路だ」     
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!