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「ミルテさまは……病状が悪化していまして」
家政婦が口を濁す。ダンテはハッとした。
「まさか、植物化してるのか」
「はい……あ、ダンテさま!」
ダンテは家政婦を押しのけ、屋敷の中に入った。足早に廊下を通り、奥の部屋へ向かうダンテを、リオンは慌てて追いかける。
ミルテの部屋の入り口に、立ち尽くすダンテの背中が見えた。薔薇の蔓が足もとに伸びてきている。
ダンテの肩越しに、薔薇の蔓に覆われたミルテが見えた。ベッドに寝かされて、微動だにしない。リオンは息を飲んで、目の前の光景を見つめた。ダンテはミルテに近づいていき、その顔を覗き込む。
ミルテの身体は、蔓に覆われてほとんど見えない。顔だけはまだかろうじて見えているが、瞳は固く閉ざされ、まるで人形のようだった。
「リオン」
ダンテに手招かれ、リオンはそちらに向かう。変わり果てたミルテの姿を見下ろして、呆然とつぶやいた。
「これは……なに?」
部屋を覆う薔薇の蔓。死んだように横たわる、ダンテの大叔父。ダンテは、ミルテの顔を見下ろし、淡々と言った。
「植物化だ。呪いが末期まで進行するとこうなる。こうなったら……薔薇の棘が心臓を食い破るまで何もできることはない」
「そんな……」
「俺の末路だ」
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