紅薔薇×黄薔薇

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 その声に反応し、車から降りた青年が、こちらに視線を向けた。ダンテによく似た姿。違うのは、瞳が黒で、眼鏡をかけていること。彼は口元を緩め、 「おや、ダンテ。何をしてる?」 「そっちこそ」  なにしてる、とダンテが続ける前に、車からすらりとした足が覗いた。かつりと靴を鳴らして、地面に少女が降り立つ。  さらりと背中に流れた黒髪、真っ白な肌──リオンはその美しい少女を見て、あっ、と声をあげた。黒曜石のような瞳をこちらに向けた。 「あら、こんにちは。また会ったわね」  ダンテは怪訝な目でリオンを見た。 「知り合いなのか?」 「う、ん。絵本をくれたの……」  青年は眼鏡を押し上げ、 「彼女はシルヴィア・カークランド。おまえの婚約者だよ」 「!」  リオンは息を飲んで、ダンテと少女を見比べた。ダンテは、少女をじっと見つめている。少女もこちらを見返して、柔らかく微笑む。ダンテはすでに興味を失ったかのように、平坦な声で尋ねる。 「で、その婚約者様がなんで大叔父の家にいる」  ルーベンスはくすくす笑い、 「決まってるだろう? 大叔父さんの呪いを解くためだよ」 「なんだって?」 「そうだな──ちょうどいい。ダンテ、おまえも来なさい」  促されたダンテは、兄について歩き始める。ダンテについて行こうとしたリオンに、ルーベンスが言う。     
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