66人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
その声に反応し、車から降りた青年が、こちらに視線を向けた。ダンテによく似た姿。違うのは、瞳が黒で、眼鏡をかけていること。彼は口元を緩め、
「おや、ダンテ。何をしてる?」
「そっちこそ」
なにしてる、とダンテが続ける前に、車からすらりとした足が覗いた。かつりと靴を鳴らして、地面に少女が降り立つ。
さらりと背中に流れた黒髪、真っ白な肌──リオンはその美しい少女を見て、あっ、と声をあげた。黒曜石のような瞳をこちらに向けた。
「あら、こんにちは。また会ったわね」
ダンテは怪訝な目でリオンを見た。
「知り合いなのか?」
「う、ん。絵本をくれたの……」
青年は眼鏡を押し上げ、
「彼女はシルヴィア・カークランド。おまえの婚約者だよ」
「!」
リオンは息を飲んで、ダンテと少女を見比べた。ダンテは、少女をじっと見つめている。少女もこちらを見返して、柔らかく微笑む。ダンテはすでに興味を失ったかのように、平坦な声で尋ねる。
「で、その婚約者様がなんで大叔父の家にいる」
ルーベンスはくすくす笑い、
「決まってるだろう? 大叔父さんの呪いを解くためだよ」
「なんだって?」
「そうだな──ちょうどいい。ダンテ、おまえも来なさい」
促されたダンテは、兄について歩き始める。ダンテについて行こうとしたリオンに、ルーベンスが言う。
最初のコメントを投稿しよう!