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「ぼくな、さっちゃんのこと好きやけ。花火いっしょに行こうな」
ちょっとだけお頭の弱い近所の男の子がわたしを花火大会に誘う。
「やだよ。よっくんと行くなんて。おもしろないわ――
そやっ、打ち上がった花火取ってくれるんやったら、行ってもええよ」
無理難題を押し付けたらきっと諦めるだろう。
「そんなこと言うてもあんなん取れやん」
「そしたらあかんわ」
よっくんはうつむいたままじっと何か考えていた。宙を見つめたまま唇を突き出したり引っ込めたりしている。こういうふうに固まってしまうとどれだけ時間がかかるかわからない。
「ほな、うち浴衣着せてもらわなあかんけ、帰るわ」
聞こえているかどうか知らないが一応そう伝え、わたしはよっくんの前から立ち去った。
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