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白い猫はまっすぐに夏生を見上げていた。
「最初に会ったとき、おばば様が言ってたでしょ。あやかしは、人に覚えていてもらわなかったら存在できないって。だからね、夏生ちゃんがわたしたちのことを知っていてくれるだけで、わたしたちには救世主なんだよ。それに――」
何かを言いかけたところでスズランの言葉が止まる。「それに?」と首を傾げると、少し迷ったような顔をして、スズランが言った。
「――夏生ちゃんが来てからイナホさん、少し変わったの。何だか優しい感じなったっていうか、隠してるみたいだけど、嬉しそうにしてることが増えた気がするの。おばば様は気付いてて言わないけど……。今日、夏生ちゃんにあんな言い方をしたのはきっと、危ない目に遭わせたくなかったからだよ。ちゃんとお礼をしに来てくれたひとで、わたしたちのことを怖がらずにいてくれたのは夏生ちゃんが初めてだから、イナホさんもどう言っていいのかわからなかったんだと思う」
「え?」
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