世繋ぎ狐と女子高生

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 抱えた膝の上に顎を乗せると、祖母はからからと笑った。 「礫島の話と言ってもね、ダイダラボッチだけじゃないだに?」 「え? 他にもあるの?」  思わぬ言葉に、夏生が体を起こし、瞳を輝かせる。  嬉しそうに顔を綻ばせた祖母は、ゆったりと語り始めた。 「礫島の底にはね、雌の白い龍が住んどるんだって。その龍は、雌の龍と人間が愛し合って生まれた子でね、若草山におる雄の龍に、時々会いに行くって言われとるのよ」 「龍と人間で、龍が生まれるの? 何で?」  夏生にはまだ、どうしたら子供ができるのかなどという知識はなかったが、人と人でないものがどうして相容れられたのかは気になった。  素直に尋ねると、祖母は一際柔らかな表情を浮かべる。 「何でかねぇ? 本当に好きになったら、人だとか、龍だとか、そういうもんが関係なくなるのかもしれんね」 「ふぅん。でも何で湖のなかに住んでるの? お父さんとお母さんは、どうしちゃったのかな?」 「何でも、他所の湖のほとりに隠してあった卵を、ダイダラボッチがうっかり土と一緒に持ってきて、知らないうちに浜美湖に落としてしまったんだって」 「やっぱり、ダイダラボッチだ!」  思わず、と言った様子で夏生が口を挟むと、目元の皺を増やして祖母が笑った。     
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