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しかし、ぺたぺたという足音は、しっかりと夏生のあとをついてくる。
不審者対策にはスマートフォンを持って歩くと効果があると、どこかで聞いたことを思い出した。
(嫌だな。スマホを持って歩いたら、離れてくれるかな?)
僅かな期待を胸に、ポケットから再びスマートフォンを取り出すが、ぺたぺた音は止まない。通話の真似をしてみても、それは縋るようについてくる。
タッタッタッ……
ぺたぺたぺた……
しつこい足音にだんだんと苛立ってきて、ぎゅっとスマートフォンを握りしめた。
「普通はそこで離れるでしょ!? 何の用よ!」
自分にできる対応が尽きた夏生は声を上げ、思わず足を止めて振り返る。
負けん気が強い夏生は、護身術など身につけていなくても、切羽詰まれば相手に立ち向かってしまうという、少しばかり無謀な性質だ。
だが、振り返った夏生は、スマートフォンの画面の明かりに照らし出されたものに、目を真ん丸にした。どんぐり眼に映ったのは、夏生の瞳に負けず劣らずの見事な球体だったからである。
「何これ? どこから出てきたの、このバランスボール」
きょろきょろと辺りを見回すが、今立っている道路脇に民家はない。
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