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街灯もほとんどない道はやけに暗く、聞こえていたはずの虫の声も、いつの間にか聞こえなくなっていた。
急に空気が冷え込んだ気がして、十月ってこんなに寒かったっけ? と首を傾げながらも、転がりもせずに浮かび上がっている球体を改めて見つめた。
じろじろと観察し、彼女は不思議なものに目が止まる。
「……足? もしかして、動くバレボーちゃん人形とか?」
バレボーちゃんとは、バレーボールに目があり、手足が生えた、バレーボール大会によく現れるマスコットキャラだ。
しかし、眼前のそれは、足はあれども、手と目はない。つるつるの球体に、足だけがちょこんと生えている状態である。
ボールが足の上に乗っているようにしか見えないものに、ふつふつと興味が湧いてくる。
恐怖に好奇心が勝った夏生は、そっと近寄り、指先でツンと突いてみた。ぽよん、と跳ね返ってくる。
思ったよりも柔らかい、と感心していると、足の生えた球体に横一閃の小さな亀裂が入った。
「へ?」
「おまえ、つついたな」
大人とも子供ともいえない、中途半端な甲高さの声が耳に届く。
「しゃ、喋った!?」と夏生がぎょっとすると、球体が身体を曲げた。
「おれ、しゃべるぞ。おまえ、おれがみえるのか」
「会話できるの? 超ハイテク!!」
「はいてく?」
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