第4話 腐女子と涙としましま芋のメイプルココナッツ

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 私、乃ノ太郎は比較的多趣味だ。  ピアノとギターを弾き、小説の読み書きはもちろんとして、運動音痴だが機会があれば踊る。  高校の先輩OGをつてに宝塚の舞台を見に行くこともあったし(柚希さんは神)、落語心中を読んでからは寄席に憧れている。  イラストを描くのも嫌いではなく、映画も音楽もそれなりに好きときた。  すべてに手を出そうとすると当然に時間が足りない。  ひとつに集中して取り組めばいいものを、やってみたがりなのだ。  働くこと以外は。  服屋にいけば服が作りたい。  クレイアニメを見ればアニメが作りたい。  料理番組を見れば料理がしたい。  とにかく調べてやってみよう!!いえい!!  それがとっ散らかった乃ノ太郎の頭の根本的な悪癖だ。    その多趣味の中でも、出さなかった項目に腐女子というものがある。  しかしこの項目には乃ノ太郎、いささか疑問があるのだ。  私が初めてblに触れたのはハリーポッターの二次作品だった。  どがつくハリーポッターヲタだった幼少の私はそれがblであるかには頓着がなく、ただただ目に入ったハリーと名のつくものは読み喰らわなければ気がすまない病をわずらっていた。  だから決してBLに触れずに育ってきたわけではない。  たしかに読んでは来たはずなのだ。  しかし。  ではどんなBL作品を読んでいましたか?  というと、答えられない。  ぱっと作品名が出ない。  思い返せばワナビ腐女子、乃ノ太郎はニワカ腐女子なのではないかと己を疑っているのだ。     よしBL書くぞ。  乃ノ太郎はそう思い立ってからようやくまともに読みはじめたくらいのビギナー腐女子である。  好きな作家は?  好きなカップリングは?  こんなことを聞かれるかはわからないが、聞かれたらしどろもどろになるだろう。  そして申し訳なさに勝手に凹むのが目に見えている。  他の腐女子との出会い。  それもまた乃ノ太郎にとってちょっとした恐怖である。  「BL書いてるんだ!」  「そうなんだあ!すごいね。え、最近はBL何読んだ?」  「(ェェェェエエエエエ………)ど、同級生(未読)…とか、好き、だよ(白目)」    
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