第1話 乃ノ太郎と絶望の海鮮塩焼きそば

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「落ちた……」  呆然とした声が部屋にポツリと落ちた。  一年かけて取り組んだ国家試験に落ちたのだ。      "司法書士"  それが私が人生再建をかけて挑んだ称号の名だ。    ニートには高額きわまりない塾の費用を親の脛から賜って今、その闘いに幕が降りた。  見事なGAME OVERぶりだ。  これで私は剣も盾もなく現実世界というダンジョンに放り出されることが決定した。  ジョブはニート。  スキルは10年ほど埃を被った英語検定2級。  そして運転技能を伴わない普通免許。  仲間はよく噛みつくツンデレ猫"おばあたん"生後9ヶ月のみ。  遮光カーテンの暗闇で発行するキーボードを滑るように叩く。  出版社のサイトを見ても新人賞の結果はやはり出ていない。  …くそすぎる。    もはや現実世界こそ私にとっての異世界だというのに。  ニートから社会人への転生とかどれだけハードモードなんだ。  肩を落とす…というかベッドに伸びる。  もうやる気がないライフがない社会人としての適性がない。誰よりない。  私、乃ノ太郎の人生はただ今よりハードモードに入ったのでとりあえず夕飯の塩焼きそばを作りたいと思います。
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