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「母さんは、僕を信じてくれたから、此処に転校させてくれたんでしょう、」
淋しいのは、秋鹿も同じだ。けれど、こうして気持ちを伝え合える。互いのぬくもりを感じ合える。父さんの云ったとおり、離れてたって、大丈夫だ。
「転校させてくれてありがとう、母さん」
「秋鹿……」
洟をかみ、夏紀は照れ笑いをした。
「そうだ、この間、戸棚の整理をしていたら、父さんが秋鹿に渡すつもりだったDVDが出てきたの」
「父さんが?」
「ええ。前にあなたが欲しがってたからって、父さんが買ってきたものなんだけど、私が反対したの。あなたが学校のテストで酷い点数を取ってきた直後だったから、また成績が下がるから駄目だって云ってね。その代わり、秋鹿が何かを頑張ったら、そのDVDを渡そうって、決めていたの。でもすっかり忘れてしまって……ごめんなさいね」
元はと云えば、秋鹿が悪いのだから仕方が無い。秋鹿は苦笑した。
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