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「これ、母さん……?」秋鹿は目を円くした。
「ええ、そうみたい」
ハルは微笑んだ。
「憶い出したわ。昔、夏紀にこの薔薇を貰ったんです。何も云わずに渡すのだもの、こんなこと書いてあるだなんて、気附きもしませんでした」
「おばあちゃんの好きな薔薇だね」
きっと、懸命に折ったのだろう。幾つも折れ線がついていた。
「ハルさん、それ、返すわね」麗ら彦が云う。
「ええ、ありがとう、麗らちゃん」
狢の籠枕が店に入ってきて、例の如くカウンターの端で睡りはじめる。
「今日はふらここさん、来ないのかな、」
秋鹿は入り口の扉を見た。ふらここが来たら、お礼を云いたかった。
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