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 夏紀から秋鹿宛に、荷物が届いた。段ボール箱の中には、約束していたDVDと、新しい秋服、秋鹿の誕生日プレゼントである腕時計が入っていた。  DVDは本と一緒に、リボンを掛けて包装されていた。秋鹿がずっと憧れていた本だ。中学校の入学祝いに、父親にねだろうと思っていたが、その前に父親と離れてしまった。この本が欲しいと、父親が識っている訳がないのに、どうしてだろう。  不思議に思いながら、添えられた手紙を開く。父親の字で、こう書かれていた。 『秋鹿、ごめんなさい。父さん、おまけで貰ったストラップを失くしてしまったよ。二人で映画館に観にいった時、秋鹿はあの猫をとても気に入っていたから、がっかりしただろう。本当にごめんなさい。おわびに、本を一緒に贈ります。綺麗な表紙だから、きっと秋鹿の気に入ると思う』   もしかして、と、銀河を見る。包装紙で遊んでいた銀河は、(くび)を持ち上げて、 「どうした、秋鹿?」 「ううん、何でもない」  秋鹿は可笑(おか)しくなった。父さん、ストラップは、失くしてなんかなかったんだよ。ちゃんと受け取って、僕の手元にあるから。
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