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ゴールを設定する、という言葉が医療現場には存在する。治療の過程でどこまでを最終目標にするのか。歩けるようにか、食事が取れるようにか、完治か、とりあえずの痛みの除去か、最後の看取りまでか。
だけど今生きてる人を目の前に、どこまでやる?っておかしくない?最後まで自分らしく生きたいと思ってる人に、じゃあここまで出来たから退院ね、とかこれが出来ないからまだ入院ね、とか。
みんな家にいたい。出来ないこといっぱいあっても家に帰りたい。
でも家族の事情もある。ましてや医療のことは殆どの人が素人なんだ。
だから私にできることをしたい。私が少しでもみんなの役に立つなら。
「そんな君が大好きなんだよな。いつでも一生懸命な君が。
あったかくて居心地よくて、いつまでもそばにくっついていたくなる。
多分患者さん達も同じじゃないかな」
耳元で囁かないで。
くすぐったい。
欲しい言葉紡がないで。
泣きそうになる。
「僕は医者だからか、胸やお尻の大きさや形に興味があるかと言われたら実のところ、ない。
毎日人の体にメスを入れてるから、内蔵の色くらいは綺麗かどうか気になるかな。
だけど、その分ここにはものすごく興味がある」
私の首に掛けられた聴診器を左手で外して自分の耳に付ける。
さすが慣れてる。そのままこうもりさんを私のバインに、違う、バインの上、心臓に押し付ける。
「僕の知る女性の中で君はピカイチにここが綺麗なんだ」
どうしよう。
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