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第一章
少女が窓の外をみると、仕事上がりの男の人たちがいた。前にあの人たちにどんなお仕事をしているの?と聞いたら
「お兄さんたちは悪をやっつけてるんだよ。」
とだけ教えてくれた。悪を退治するなんてまるで本に出てくるような正義のヒーローみたいで少女はいつか私もやってみたいと密かに憧れを抱いていた。
「部屋にいるの?そろそろ降りておいで検診の時間よ。」
お母さんの呼ぶ声がする少女は大きな声で返事をして掛け降りてった。
「まだ何も思い出せない?」
医者は問う。少女は必死に記憶を探っていたのか暫く黙り込んでいたが悲しそうな顔で
「うん、何も思い出せない。」
「そっか、じゃあまた今度おいで思い出したらすぐに教えてね。」
「はーい、ありがとございました。」
診察が終わって外に出ると町は真っ赤に染まっていた。
「ねぇお母さんなんで私は記憶がないの?」
「それはね、木から落っこちて頭打ったからよ昔っから本当にお転婆で困った子だわ。」そういう母の顔はどことなく悲しそうに見えた気がしたのは気のせいだろうか。
患者が帰ったのを見届けた医者は先程の少女のカルテを書いていた。
No.003 記憶異常なし
「思い出してもらっては困るからな…。」
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