6 人の望みの底なしと恋

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 カニ王子の星へついてからも、ホワイトアウトの心は沈んだままでした。ホワイトアウトは、王子の愛で自分が生き返ったのだと信じていました。    無免許医たちはホワイトアウトの身体を調べたので、真実を知っていました。  第四の無免許医は、第七の無免許医に、 「ホワイトアウトに真実を話して病的な夢から現実へ引き戻せ」  と言いましたが、第七の無免許医は (面倒くさい……)  と思い、黙っていることにしました。  ほんとうのところ、ホワイトアウトは死んでいたのではなく眠っていただけでした。    ホワイトアウトが浴びた毒ガスは、非致死性のものでした。  そのガスはZolpidemという鎮静剤が主な成分で、古典的なレイプ薬として知られていました。  スノーホワイトはそれを闇市場で手に入れました。 闇市場では致死性の毒ガスも、非致死性の毒ガスも一緒くたに売られていました。  致死性の毒ガスのほうが手入りにくいため、良心的な闇業者は、   致死性の毒ガスを高い値段   非致死性の毒ガスは安い値段  というように、買い手の直感を裏切らない値段のつけかたをしていました。    けれど、スノーホワイトが選んだ業者は、闇市場の中でもとくに濃い闇をもつ業者でしたので、非致死性の毒ガスを猛毒のガスのように紹介し、高い値段をつけて売っていました。 スノーホワイトはいちばん高い毒ガスなら、いちばん強い毒をもつだろうと安易な考えをもっていたため、業者のカモにされてしまいました。  スノーホワイトが犯したミスはそれだけではありません。棺の速度を調べていなかったことも、大変な痛手でした。  300kmを進むのに、あの素晴らしい棺なら5秒もかかりません。  もし、スノーホワイトが、s●riにたずねるのがあと数十秒早ければ、ホワイトアウトにとどめをさすことができたでしょう。
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