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2 悲劇
そして、ねたみと、こうまんとが、野原の草がいっぱいはびこるように、女王さまの、心の中にだんだんとはびこってきましたので、いまでは夜もひるも、もうじっとしてはいられなくなりました。――青空文庫 白雪姫
*
スノーホワイトはある日、いつも使っているAIとはちがう、とくべつなAIを呼びました。そのAIはスタンドアローンで運用されておりましたので、政府の監視を受けません。富豪とスノーホワイトは、公にできないことは全てこのAIにやらせていました。
「あの子を、べつの星へ連れていって。いいえ、連れていくだけじゃダメだわ。二度と戻って来ないように、あの子を殺して。そしてその証拠に心臓を持ってきなさい」
「わかりました」
AIはスノーホワイトの娘の部屋へ向かいました。スノーホワイトの娘は、そのAIを不思議そうに見つめました。
「あなたが部屋に来るなんて、どうしたの、Ta●?」
「お嬢様、お出かけです」
その日の夜おそく、AIとスノーホワイトの娘は、自家用スペースシャトルで、宇宙へと飛び立ちました。
AIは行先を地球に決め、シャトルはワームホールをぬけて一気に太陽系へ出現しました。銀河政府の監視網をかわし、地球のとある国立公園へ、シャトルは着陸しました。地球は夕方でした。
「また夕焼け。一日に二回も太陽が沈むって、わたしすごいこと体験してる!」
「もっとすごいことが体験できますよ。あの森の奥へ行きましょう」
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