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3 森の奥にひそむ者たち
スノーホワイトの娘は、ピューマのおかげで命びろいをしました。
けれど銃の弾はスノーホワイトの娘のよこっ腹を撃ちぬいており、そこからたくさんの血が流れていました。
バオバブのうらには、ライラックの茂みがありました。スノーホワイトの娘はライラックをかきわけて、その奥に流れる小川を渡りました。
すると、小さな小屋がぽつんとあるのが見えましたので、スノーホワイトの娘は、よろよろとその小屋の中へ入りました。小屋の中にはだれもいませんでした。
――――--・
そのへやのまん中には、ひとつの白い布きれをかけたテーブルがあって、その上には、七つの小さなお皿があって、またその一つ一つには、さじに、ナイフに、フォークがつけてあって、なおそのほかに、七つの小さなおさかずきがおいてありました。
そして、また壁ぎわのところには、七つの小さな寝どこが、すこしあいだをおいて、じゅんじゅんにならんで、その上には、みんな雪のように白い麻の敷布がしいてありました。――青空文庫 白雪姫
スノーホワイトの娘は、部屋の中をはいずりまわり、やがて動かなくなりました。
妖精のすみかのような可愛らしい部屋は、平家の亡霊にとりつかれた廃寺のようになってしまいました。
スノーホワイトの娘は虫の息でした。このままほうっておけば、出血多量で死んでしまうでしょう。運良くすぐに、この小さな家の主人たちが帰ってきました。
その主人たちというのは、七人の無免許医でした。
七人の無免許医は、普通サイズでしたので、とうぜんこの小さな小屋には住んでおりません。
この小さな小屋には臓器移植のためにつくられた、クローンの子供たちが住んでいました。子供たちはみんな《出荷》されましたので、小屋にはだれもいなかったのです。
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