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1 はじまり
むかしむかし、冬のさなかのことでした。雪が、鳥の羽のように、ヒラヒラと天からふっていましたときに、ひとりの女王さまが、こくたんのわくのはまった窓のところにすわって、ぬいものをしておいでになりました。
女王さまは、ぬいものをしながら、雪をながめておいでになりましたが、チクリとゆびを針でおさしになりました。
すると、雪のつもった中に、ポタポタポタと三滴の血がおちました。まっ白い雪の中で、そのまっ赤な血の色が、たいへんきれいに見えたものですから、女王さまはひとりで、こんなことをお考えになりました。――――青空文庫 白雪姫
*
ある惑星にとても美しいコールガールがいました。肌は雪のように白く、ほおは血のように赤く、髪の毛は黒檀のように黒くつやがありました。彼女の名前はスノーホワイトと言いました。
自分の美貌にうぬぼれていて、わがままで、冷酷な女でした。
スノーホワイトには娘が一人いました。
スノーホワイトとその娘は、とある大富豪の別荘に住んでいました。別荘には何でも知っているAIがいました。
「Hey,S●ri.この屋しきから半径300km以内にいる人間の中で、いちばん美しいのはだれ?」
スノーホワイトがそう聞くと、AIはたいてい、こう答えました。
「スノーホワイト、あなたがいちばん美しいです」
時は流れ、スノーホワイトの娘は12才になりました。
そのころ、スノーホワイトは、アファーメーションにはまっていました。
スノーホワイトは、日増しに美しくなっていく娘の姿に、心のおく深いところで不安を感じていました。しかしプライドの高いスノーホワイトが、〝娘が自分よりも美しくなるだろう〟という事実を、はっきり自覚することはありませんでした。
そういう不都合な事実は、スノーホワイトの勤勉な無意識がひとつひとつ丁寧にラッピングして、記憶の墓場におくりこんでいたからです。
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