50人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は一人だけ、いなかったナナ。
噂をすれば何とやらで、外来室に唐突に、ナナの気配が戻ってきました。
あれ、色んな世界に繋がる外来室に直接帰るってことは、ナナのお出かけ先は異世界だったみたい?
「ただいまー! ――あれ? お兄ちゃんと猫羽ちゃん?」
処置室にナナが駆け込んできます。その後ろの、多分ナナを連れ出してくれた人影を見て、わたしは息を呑んでしまいました。
「え? 猫羽ちゃんいたんだ、わーい、タイミングいい♪」
襟巻みたいな仔狐を肩に乗せて、深めの帽子を被ったお洒落なヒト。
元いた所では兄さんが元々お世話になってたヒトが、診療所にナナを送ってきてくれたみたい。
「こっちじゃ随分たつけど、元気してるー? 悠夜くんとか猫羽ちゃんがいないと張り合いがなさそうだよー♪」
「……クウ」
「え? 槶くんとも知り合いなんだ、猫羽ちゃん! 今日はねぇ、カイ先生のオススメで槶くんに色々相談に乗ってもらって、とても気が楽になったんだ、私!」
嬉しそうなナナが、クウの袖を引っ張って教えてくれます。クウ、そう言えばたまに薬剤師さんとして、ここ、橘診療所に出入りしてたもんね。
ナナ、本当に色んなヒトとお友達なんだね。悪魔の氷輪くんとも仲がいいもんね。
サトシは突然現れた美形のお兄さんなクウに、目を白黒させてナナ達を見つめてます。
とりあえずクウを警戒するようにナナを引っ張って、まるでお父さんみたいな顔で尋ねるのでした。
「相談って……何しに行ってきたんだ? ナナ」
「うん。正美お姉ちゃんが、私のせいで最近イライラしてるから、私には何ができるかなあって。お姉ちゃんには心配かけっぱなしだから、どうしようって思ってたの」
「って――ナナ、知ってたのか?」
「え? だってお姉ちゃん、昔からそうだよね?」
最初のコメントを投稿しよう!