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 課長さんはわたしのことまで、事務所に送ってくれると、タクシーに乗せてくれました。  三人で乗って、わたしが助手席、課長さんと山田さんが後ろでお話ししています。 「お前の社内IDは昼間、シュレッダーの中から発見された。お前、本当に全然わかってなかったんだな?」 「……すみません……ちょっと、気が緩んでました……」  そういうことじゃない。と、課長さんはまた、大きなため息をつきます。 「再発行の手続きはもう済ませてある。明日にもできあがるだろうが、お前は週明けまで休暇をとれ。その間にゆっくり、どうして休まされるのか理由を考えろ」 「…………」 「言っておくが、チーム全員、お前の能力もやる気も認めている。それでもここ最近、判断力の低下と周りを見る余裕の無さが目立ち過ぎる」  そう言えば今日、山田さんは何というか、何事も効率が悪かった気はします。  わたしは初めて会う人だから、元々そんな人なのかなと思ってたけど。  山田さんは後ろの席で、両手を握りしめて、大粒の涙を両目に浮かべています。  ……うん。その気持ちは、ちょっとだけ、わかる気がする。  わたしもきっと、自分の納得いくように仕事ができないと、山田さんと同じように悔しいだろうから。
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