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多分だけど、山田さんには、怒れば怒るほど逆効果だったんだね。
怒られた分、その倍くらいは頑張っちゃうから、そうなるとどんどん疲れちゃうよね。
疲れちゃうと、余計にもっと、色んなうっかりもひどくなりそうだしね。
かなり難しい顔で、ずっと黙り込んでる山田さんに、課長さんはぽんぽんと軽く肩を叩きました。
「まぁ、そう焦るな。お前はまだ若いんだから」
……そこで、山田さんの我慢は、とうとう決壊してしまいました。
うあああああと、山田さんが大泣きを始め、ちょうど事務所の近くについた所でタクシーも停まります。
「だって課長……!! 課長もみんなもこんなにいい人達ばかりだから、私だけできてないの駄目だと思って、私はダメな奴だから人の三倍は努力しなきゃいけないんだって……!!」
まくしたてる山田さんに、やれやれと課長さんは、とても優しい顔で苦笑いました。
「だから、焦るな。おれにはそれしか言えないが……」
送ってもらったお礼を言って、タクシーを降りたわたしが見た二人のお話しはそこまででした。
課長さんは最後に、わたしにそっと、微笑みかけてくれたようでした。
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