白箱のスターチス

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+++ ご飯を食べないとだめですよ。と口々に皆言った。でも食欲がなくて何も食べられないんだ。プリンだったら食べられるかもしれないと言ったけど、渡されたプリンは美味しくなくて食べられなかった。そしたら点滴が始まった。脱水になってしまわないようにと言われた。別に脱水になったってかまわなかった。僕は、待ってる何かさえ来てくれれば、別にもうそれでよかったのだ。 「あの。」 「どうしました?」 ベッドの傍らでパソコンを弄っている人に声をかけると、その人はパソコンから目をそらすことなく返事をした。僕が「聞きたい事があるんだけど。」と言うと、面倒くさそうな顔をして今度は僕を見る。 「僕は、何を待っているんだっけ。」 「さあ…。」 返事はそれだけだった。その人は特に何か付け加える事もなく、しゃっとカーテンを閉めて行った。「今は夜ですか。」「今日は何日でしたっけ。」締め切られたカーテンに向かって大きな声で尋ねる。もう、いなくなってしまったのだろうか。返事はない。 「佐藤という看護婦さんに聞けば、僕が何を待っているかわかると思うんですけど…。」 返事はなかった。
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