白箱のスターチス

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なんて素敵な人なのだろう。こんな人と毎日一緒にいられたなら、どんなに幸せだろう。同期の栗原は結婚してから家に帰りたくない毎日だとぼやいていたが、この人の待つ家にだったら、仕事を放ってでも帰りたくなってしまうだろう。…多分僕よりも年上だし、こんなに綺麗で優しい人をほかの男が放っておくわけがない。 「結婚は、しているのだろうか…。」 「どうしたんですか?急に。」 「え…?」 考え事がどうやら口からこぼれ出てしまったようだった。看護婦さんは驚いた表情で僕の顔を覗き込んだ。視界の端で看護婦さんはくすくすと笑い、「音尾さんは考え事がすぐ口に出ちゃいますね。」と言った。僕は思わず看護婦さんに視線を向ける。 「そ、そんな事ないよ!」 「そんな事ありますよ。この間は私の事魔法使いみたいと言っていましたよ。」 「そんな事は言っていない!」 「全部喋ってましたよ。ふふ、面白い人。」 「…い、意地悪言わないでくれ…。」 看護婦さんがからからと笑うのを見て、確かに僕は昔から思ったことを口に出してしまう癖があって、それをよくからかわれたこと思い出した。僕もなんだか愉快になって、看護婦さんにつられて声を出して笑った。 看護婦さんは、ふとカレンダーを見た。15日までにバツ印が付いている。今日は16日なのだろう。それから、17日と22日に赤い丸印がついている。「明日の手術、頑張りましょうね。」と話す。明日、手術なのか。通りで左足が痛いわけだ。足をさすると、看護婦さんもそこに手を添えてくれた。(優しい手だ。優しい人だ。ああ、僕は、この人が、好きだ…。)心臓のドキドキは、いつまでもやみそうになかった。
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