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かといって思い上がったところは一つもなく、情に溢れ性格は豪放磊落だ。息子の暁斗から見ても魅力的な人物で、今の剣菱協会が潰れたとしても、手を差し伸べてくれる人間は山といるだろう。
そうでなくとも、非常にアグレッシブルな勝治だ。ただで転ぶことはないし、起きるときもただではない。どちらかというと控えめで大人しい暁斗とは、まるで正反対の性格をしている。
「……ならば問題ない。引き受けてくれるな?」
おっとりとした口調であっさりと父親の才能を認めた暁斗に、上條は少々驚いた顔をしていたが、その様は暁斗の目には入らなかった。
それよりも、自分が上條に気に入られれば、少しは家のためになるだろうか、いやいや、上條を当てにするのは浅ましいことだと、そればかり考えている。
学部長である久我山がわざわざ紹介してくれた手前もあるし、正直なところ断りにくい。ちらりと上條を見れば、予想外の強い目線を向けられた。
有無を言わさぬような目つきに暁斗は気圧され、気が付いたら頷いていた。
「わかり……ました。ただ下宿を引き払うのであれば、両親に許しをもらわなくては……」
「それは私の方から伝えておく。どうせ援助の話もあるからな」
上條はそう言うと、再び口角を上げた。それは先程とは異なり、どこか人の悪さを含んでいたが、暁斗はついぞ気が付かなかった。
「では、白河暁斗君。よろしく頼む」
「……はい」
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