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報道は翌日も続いた。
何紙か読み比べてみたが、書かれていることは散漫としていて詳細を欠く。だが、銀行からの融資が受けられていないという一点については共通しているため、おそらくそこは正しいのだろう。
だがどうしてと、暁斗は首をかしげる。最近始めた事業は、いずれも順調だったはずだ。父の勝治が、暁斗を心配させまいと嘘を吐いているのだろうか。
下宿先の老夫婦も、心配そうに暁斗を見てくる。学友たちからもさりげなく探りを入れられたが、暁斗自身が何も知らないのだから答えようがない。心配するなと口先だけで答えながら、ただ気持ちだけが重く沈んでいく。
そんな折、暁斗は学部長から呼び出された。
身に覚えがあるとしたら倒産報道で、ひょっとすると自主退学を進められるのだろうかと、暁斗は戦々恐々としながら学部長の部屋に向かった。
「白河君か。よく来たね」
飴色の扉を開けて部屋に入ると、灰色の髭を蓄えた経済学部の学部長、久我山尚彦が待っていた。マホガニー製のワークデスクの前に置かれた応接セットには、久我山とは別にもう一人座っていて、暁斗は邪魔をしたかと一瞬ひるんだ。
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