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「あれっ、中田先輩?」
僕は目の前に、会社の先輩である中田 玲子さんを見つけた。
よく、ヘマばかりする僕に唯一優しくしてくれる、女神のような人だ。
その中田先輩がとてもお洒落をして急いで信号を渡っていく。
何か大事な用があるのだろうか。
僕は思わず、先輩の後を追った。
先輩の事を少しでも知りたいという軽い気持ちだった。
とりあえず、信号が赤になりそうだったので慌てて渡る。
先輩は頬を上気させて、足を止めることなく信号の先の角を左に曲がって行った。
姿が視界から消えたら、どこに行ったのか分からなくなってしまう。
見失わないように、僕は角までダッシュした。
曲がってすぐに先輩の姿を見つけて、慌てて見つからないように身を端に寄せる。
そんな事をしなくても、先輩は急いでいて前しか見ていないから大丈夫だとは思うんだけど、僕は探偵の真似事をしている気分に少しテンションが上がってしまっていた。
それから、少しして先輩はお洒落な喫茶店に入って行った。
こんな場所に急いで来るなんて、誰かと待ち合わせだったんだと立ち止まって大きな溜め息を吐いた。
お洒落をしているだけでも誰かと会うって事は予測できていたのに、再びしょんぼりしながら来た道を戻ろうとした。
それにしても、先輩今会っている誰かに何かプレゼントをしようとしていたんだろうか?
左手に提げていた大きな紙袋の事が思い出される。
きっと、彼氏か何かだろうなと思うと何だか悔しくてそいつを見てから帰ろうという気持ちになってきた。
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