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先輩の返事は尋常じゃないくらい必死だった。
これは何かおかしい。
彼氏と彼女の会話じゃない。
僕はそう思った。
「お待たせいたしました。」
店員がコーヒーとクリーム砂糖を置いて去って行く。
僕は、お辞儀を返してから再び会話に耳を凝らした。
「じゃあ、数日待って。数日のうちにその子を処分してしまうから。」
「わかった。玲ちゃんだったらやれるって信じてるからね。その連絡待ってるよ。じゃあね。」
最後の方はとても甘い喋り方に変えた男はその後すぐに店を去ってしまったようだった。
僕の頭の中を「処分」という言葉が駆け巡る。
処分と言ったら、僕が思い浮かべたのは一つだけだった。
動揺した心を落ち着かせるために温くなったコーヒーを一気飲みする。
そして、深呼吸をしてから先輩の座っているところへ移動した。
「…………先輩。」
どうにかしなきゃと思ったけど、どう話をするかなんて全然考えていなかった僕は、声をかけただけで止まってしまった。
「先田くん?」
「あ、はい。先田です。」
どうしようと考えるのに精一杯でそんな間抜けな返事を返す。
「…………先田くんいつもこの辺りで遊んだりしてるの?」
その、少し硬い言い方でさりげなく探っているのが分かる。
「いえ、僕は先輩を見かけてこのお店とかに初めて来ました。彼氏さんと喋っておられたので話しかけなかったんですが。」
今のこの返事で僕がさっきのやり取りを聞いてたというのは伝わったはずだ。
僕は、先輩の反応を注意深く見守る。
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