3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
もし、先輩に見つかっても偶然ですねと言い張ればいい。
相手の姿を確認したら帰るつもりの僕は、こそこそせずに堂々と喫茶店に入った。
観葉植物でテーブルとテーブルを区切られた店内。
見晴らしが悪いので、僕は先輩の座っている場所を探すのに苦労した。
その代わりに、先輩の方からも僕が見つかりにくいという利点があって隣のテーブルに座る事ができた。
「いらっしゃいませ~。ご注文が決まられましたらお呼びください。」
店員がメニューと水を置いていった。
僕はメニューを見ながら、耳を凝らす。
隣からはやはり予想通り、男の声が聞こえてきた。
「玲ちゃん、久しぶりに会えてすごく嬉しいよ。」
「私も嬉しいわ、タクマ。」
先輩の声がいつも聞くのより高い。
「玲ちゃん!」
「あ、ごめんなさい。…………タクミさん。約束の物持ってきたわ。」
「ありがとう。これ、頼んでた通りのやつじゃん。玲ちゃんはやっぱり最高の女性だね。」
「そんな…………」
甘々な会話をこれ以上聞いてられなくて、僕は注文をする前に立ち去ろうかと考える。
しかし、僕はさすがにそんな大それた事をできなくてメニューの中のコーヒーを注文した。
「…………それで、実はまた鬱陶しいストーカー女がいるんだ。」
「えっ?」
「その子をどうにかして貰いたいんだけど…………駄目かな?」
「それは…………」
「無理だったら良いんだ。紀ちゃんに頼むから。」
「いやっ!私がやる!私がどうにかするから!」
最初のコメントを投稿しよう!