パイプ

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 いつの間にか目の前に来ていた叔父さんが俺を見ている。顔は心配そうだが、どうしてか、ちょっと怒ったような目をしていた。 「人の家を訪ねた際は、ちゃんと挨拶をしなさい。お前だと気づかずにうっかり吸っちゃうトコだったじゃないか」  そう窘められたが、言葉の意味はまったく判らなかった…その時は。  それからも俺は何度も叔父さんと顔を合わせているし、以前通りの仲良し叔父・甥の間柄だけれど、パイプを咥える姿はもう目撃していない。俺も見ないよう気をつけてるし、叔父さんの方も見せないようにしてるようだから。  あのパイプ、映画に憧れて持ち歩くようになったって言ってたけど、本当は、じいちゃんから譲られた物なんだろ? 似たような品を大昔に見かけたって、母さんが言ってたから。  こっそり受け継がれているっぽいパイプ。それはいいとして、色々気になって調べたら、叔父さんの家の…つまりは母方実家の家の周りって、通りすがりの人とか近所人とか、突然死や交通事故死が多いんだってな。  叔父さん。そのパイプで何を吸ってたんだ? いや、叔父さんだけでなくじいちゃんも? もっと以前の御先祖様達も? そして、叔父さんには子供がいないから、この先はもしかしたら俺も…?  いつかあのパイプを俺が受け継ぐのかな。そうしたらあの時意識が飛びかけた理由がはっきりするかもしれない。ただ、知った後は、もう俺はただの人間ではなくなってそうだけどな。 パイプ…完
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