パイプ

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パイプ

 叔父さんは、いつも外国映画で見るようなパイプを持ち歩いていた。だけどそれを吸っているところを見たことは一度もない。  不思議に思って尋ねたら、昔見た映画で憧れて持ち歩いているが、試したところ、煙草にしろ葉巻にしろパイプにしろ体が受けつけないので、吸えないけれど趣味で持ち歩いていると答えてくれた。  確かにパイプ自体カッコいいから持ち歩きたくなる気持ちも判る。そう思い納得したのだが、ある日、叔父さんの家を訪ねたら、叔父さんがパイプを咥えている姿を目撃した。  俺も詳しくはないけれど、本気でパイプを吸うつもりなら、中に何か詰めたり火をつける道具とかが必要な筈だ。でも叔父さんの周りには何もない。  パイプをただ咥えて、映画の場面を真似ているとかなんだろうな。  叔父さんのおちゃめな行動を微笑ましく見ていたら、パイプの上にうっすらと、白い煙のようなものが漂っているのが見えた。  煙? つまり喫煙中ってこと? でも叔父さんは煙草系は体が受けつけない筈じゃなかったか?  首を傾げながらその姿を見ていたら、急に目の前が暗くなった。  何が何だか判らないまま、意識がぼんやり薄れていく。  完全に意識が途切れる。その寸前で俺は不調から立ち直った。
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