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エニシニギを知っているだろうか。
どこかの地方で作られていた民芸品の人形で、異様な四肢と崩れた顔面を持つ。大きさは大抵手のひらくらい。
少し前にその不気味さで「呪いの人形」などと話題になったが、所持しているとリアルに不幸に見舞われる話が相次ぎ、いつしか廃れていった。
いわく、お金も人間関係も全て失う。やがて健康を損ない精神も病む。
助かるためにはエニシニギを手放さなくてはならないのだが、いくら捨てても主人の手元に戻ってきてしまうという。
エニシニギの主人でなくなるためには……
ある冬の日、高校からの帰りが遅くなった僕は、そこそこ混んだ夜の電車に座って揺られていた。
目の前に立った人物の手元にエニシニギが握られていることに気づいたのは、ぼんやり見ていたスマートフォンから目を上げたときだった。
以前ネットで見かけただけで正確なフォルムまではうろ覚えだったので、その場でこっそり検索した。
間違いなく、エニシニギだった。
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