9. ララバイ

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 奥の方は少しこんもりとしている。丘と呼ぶほどではないが、今立っている場所より少し高い。  その盛り上がった場所には三つの柱が建っているように見えた。  あれが石版だ―――― 「近づくと驚くよ」  遠藤がユキにぽつりと話した。  一歩一歩と石版に近づく。    石版の足元は少し崩れているようだが、微動だにせず建っているのがわかる。    更にユキが近づく―――― 「コンクリート!!?」      ユキが目を見開いて叫び、遠藤を振り返った。    コンクリートの壁が三つ並んでいる。  その足元は鉄筋が剥き出しになっていてサビも目立つ。    何かが心臓を突き上げ、激しく脈打つ。    遠藤が寂しげに微笑んでいる。      ユキには何がなんだかわからない。    どうしてこんな物が?  誰がこんなものを?    ぐるぐると頭を駆けまわる。 「大丈夫か? ユキ?」    アルスがユキの顔を覗きこむ。 「大丈夫……大丈夫だよ」
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