190人が本棚に入れています
本棚に追加
奥の方は少しこんもりとしている。丘と呼ぶほどではないが、今立っている場所より少し高い。
その盛り上がった場所には三つの柱が建っているように見えた。
あれが石版だ――――
「近づくと驚くよ」
遠藤がユキにぽつりと話した。
一歩一歩と石版に近づく。
石版の足元は少し崩れているようだが、微動だにせず建っているのがわかる。
更にユキが近づく――――
「コンクリート!!?」
ユキが目を見開いて叫び、遠藤を振り返った。
コンクリートの壁が三つ並んでいる。
その足元は鉄筋が剥き出しになっていてサビも目立つ。
何かが心臓を突き上げ、激しく脈打つ。
遠藤が寂しげに微笑んでいる。
ユキには何がなんだかわからない。
どうしてこんな物が?
誰がこんなものを?
ぐるぐると頭を駆けまわる。
「大丈夫か? ユキ?」
アルスがユキの顔を覗きこむ。
「大丈夫……大丈夫だよ」
最初のコメントを投稿しよう!