9. ララバイ

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 そのコンクリートの壁を眺める。  便箋に並んでいた文字がそれぞれに彫られている。 「先生」  壁から目を離せず、ユキはそのまま遠藤に話しかけた。 「どうしてコンクリートの壁が?」 「どうしてだろうね? ……僕にもわからないよ」    遠藤がそびえ立つ壁を見上げる。 「こちらとあちらは密に繋がっているのかもしれないね」  遠藤が独り言のように呟く。 「藤城さん。君にこれが読めるのかい?」  ユキはようやく壁から目を離し、遠藤を見た。 「……読めると思います」    ドクドクと音を立てていた心臓が落ち着きを取り戻す。    遠藤が手に持っていた鞄を開き、中からユキの封筒を出すと手に持ち、鞄の方をユキに差し出した。 「……先生?」  ユキが不思議そうな顔をする。
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