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そのコンクリートの壁を眺める。
便箋に並んでいた文字がそれぞれに彫られている。
「先生」
壁から目を離せず、ユキはそのまま遠藤に話しかけた。
「どうしてコンクリートの壁が?」
「どうしてだろうね? ……僕にもわからないよ」
遠藤がそびえ立つ壁を見上げる。
「こちらとあちらは密に繋がっているのかもしれないね」
遠藤が独り言のように呟く。
「藤城さん。君にこれが読めるのかい?」
ユキはようやく壁から目を離し、遠藤を見た。
「……読めると思います」
ドクドクと音を立てていた心臓が落ち着きを取り戻す。
遠藤が手に持っていた鞄を開き、中からユキの封筒を出すと手に持ち、鞄の方をユキに差し出した。
「……先生?」
ユキが不思議そうな顔をする。
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