9. ララバイ

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(月からの使者が下り立ち、兵はみんな眠ってしまいました…………)    唐突に――――あの夜恍惚(こうこつ)とした表情で話していた、ユキを思いだした。    ユキはおとぎ話だと言っていた。    アルスの頭の中にもねっとりとした物が広がって行く。    膝をついたままユキを見上げる。  まだユキは歌を歌っている。    アルスは剣を引き抜いた。    ――――このまま眠ってしまうわけにはいかない!    その刀身をギュッと素手で握り締めた。      血が流れ落ちる。    痛みで一気に頭が冴えわたった。    ユキを見上るとその視線の先には、あの巨大な石版は無かった。  
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