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(月からの使者が下り立ち、兵はみんな眠ってしまいました…………)
唐突に――――あの夜恍惚とした表情で話していた、ユキを思いだした。
ユキはおとぎ話だと言っていた。
アルスの頭の中にもねっとりとした物が広がって行く。
膝をついたままユキを見上げる。
まだユキは歌を歌っている。
アルスは剣を引き抜いた。
――――このまま眠ってしまうわけにはいかない!
その刀身をギュッと素手で握り締めた。
血が流れ落ちる。
痛みで一気に頭が冴えわたった。
ユキを見上るとその視線の先には、あの巨大な石版は無かった。
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