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ユキの瞳が大きく開かれている。
「東京タワーだわ!!」
ユキの目の前には、ビルの合間にそびえ立つ見慣れた赤い電波塔があった。
夏の雨上がりなのか湿気を含んだ空気は重くムッとしている。
濡れたアスファルトの匂いがして、ユキの胸を懐かしい物が駆け上がる。
隣を見ると遠藤もその景色に、目を大きくして見ている。
フラフラとタワーに吸い込まれるように遠藤の足が出る。
「先生!」
ユキが遠藤に叫んだ。
ハッとして遠藤はユキを振り返ると、手紙を持っていない方の手をユキに伸ばした。
「藤城さん! 帰ろう!!」
ユキの心が遠藤の言葉に吸い込まれる。
懐かしい古里の景色。
懐かしい匂い。
これがユキの世界だ。
ありのままのユキの世界なのだ。
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