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――――そうなのだ。
私は至って普通の日本の大学生だ。
それがある日突然、自分のいた場所とは違う、別の世界に放り出されてしまった。
この世界にある、全ての言葉を理解できたからこそ、偶然リュックに入れていた『医療基礎学』という本を翻訳することになった。
この世界に無い知識を伝える女性―――――『月の女神』なんて人々には呼ばれるようになってしまったし……。
はあー。
『女神』なんてガラじゃ無いんだけどな……。
この本の翻訳を終えて、早く日本に帰ろうと思っていた。
だけど私は出会ってしまっていたのだ。
ずっと一緒にいたい、離れることのできない、唯一の人と。
まあ、……たまたまその人がこのサマルディア皇国の皇太子だったので、今こういう状況になっているのだけれど…………。
「ユキ様。手が下がっております」
そう言われてユキはグイとまた両手を水平に上げる。
このサマルディア皇国の皇太子の結婚式である。国家的大プロジェクトであることは間違いない。
そんな事はユキだって百も承知だ。
それでも一つ一つ、細かくスケジュールを突きつけられているとウンザリとしてしまうのである。
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