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珍しくユキはアルスと一緒に夕食をとっていた。
アルスは日々の雑務や公務に加え、ここ最近は結婚式の準備にまで追われ、多忙を極めていた。
「ユキ。来週ウルートの町で開港百周年の記念行事があるんだ。一緒に行こう」
「ウルート? ウルート……」
「ガ……」
「言わないで! 待って」
アルスがどこにあるのか説明しようとしていたのを、ユキは慌てて止めに入った。
主な市町村はお妃教育のカリキュラムの中で勉強していたのだ。ダマクスに試験までさせられていたのである。
「わかった! ガシュインの港の南部にある、有名な将軍の像がある……えーっと誰だっけ?」
アルスはユキの回答を聞いて笑った。
「逆だ逆。ガシュインの北部にある、入江の町だよ。有名な観光地だぞ」
ユキは頭に手を当てた。
だから地理は嫌いなのだ。
「……で? そのウルートが何だっけ?」
ユキはまだサマルディアの地図を頭の中で広げて、ウルートの位置を模索していた。
「だから開港百周年の記念行事があるんだよ。皇族も呼ばれているからな。俺とユキで行くことにした」
ユキの瞳が輝いた。
最近お妃教育からの結婚式準備で、ストレスが溜まりに溜まっていたのだ。
「嬉しい! これで羽が伸ばせる」
ユキが歓喜の声を上げる。
アルスがそれを見て微笑んだ。
「まあ、行っても公務、公務で忙しいだろうが、少しくらい時間を作ってゆっくりしよう」
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