第1章 始業日にて

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【第1節】深鈴より ああ、コンタクトってのはやっぱり目が乾くなあ。桜混じりの向かい風に余計目がゴロゴロする。ばちばちと瞬きを繰り返し霞んでた視界が戻るのを確認する。それと同時に桜を見上げるあなたを見つけた。 その背筋の伸び加減に初めて会ったときを思い出す。初めて会ったあのときだって、あなたはきっと真っ直ぐな人だってわかったよ。 思わず口元が緩む。それから息をしっかり吸ってあなたのことを呼ぶ。 「おーい!歩雪くん!」 私のことに気付いてにっかり笑ってくれるあなたに、何度でもときめいてしまう。出会って二回目の春、今ではこうして、彼女として彼に出会えるのに、私たちは何も変わっていない。 「まだ、みんなは来てないの?」 横に並びながら、待ち合わせしている他の子のことを聞いてみる。 「うーん、俺が一番乗りだったみたい!深鈴は2番乗りだなー!」 私たちは晴れて付き合っているのに、2人だけでの待ち合わせでも、一緒に行くのでもなく、他の友だちと同じように待ち合わせをしている。もちろん、二人だけで会う日もあるのだけれど、四六時中一緒にいるようなカップルではない。どちらかというと、親友のような気がする。手をつなぐときだって指と指を絡めるような甘いものではないし、体を埋め合うようなハグだってしない。 キスなんてもってのほかだ。 その理由はわかっている。 「あ、春彦だ!おおーい!」 歩雪くんに呼びかけられた春彦くんがはにかんで、駆け寄る。 照れからか前髪を押さえつけながら私たちの名前を呼ぶあの子からは嬉しさが溢れている。
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