第1章 始業日にて

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【第2節】歩雪より 春彦はつい最近絡み始めたやつだ。 春彦は学部でも知り合いがそんなにいないらしく、俺もあいつの存在に気づいたのは本当につい最近だった。 体が薄いからかなんとなく儚げな印象で気づいてからは目で追うようになった。 初めて話したのは三ヶ月ほど前。たまたま立ち寄った本屋で働いているのを見てつい声をかけてしまった。 「今井くんだよね?ええっとほら俺、同じ大学で…。」 友だちから春彦の名前は聞いていたのだけど思わず名前を出してしまった時は春彦以上に俺も焦って学生証まで見せてしまった。 あまりに焦る俺の様子に、キョトンとしていたあいつもふはっと堪えきれずに吹き出して笑った。 吹き出したことが恥ずかしいのか口もとに手をあてて、それでもまだくすくすと笑う春彦は俺の名前を確認してからよろしくねとまた笑った。 正直普段の様子から笑うところは想像できなかったので、なかなか貴重なものを見た気がして、嬉しくて深鈴にその日のことをいっぱい話したのは覚えている。 それから学校で会うたびに声をかけるようになって、俺の周りの奴らとも打ち解け、今では待ち合わせまでして集まる仲になった。大人しいだけで、優しく気も使えるあいつだからどこでも打ち解けることはわかりきっていた。 けど、気を使いすぎてはいないだろうか?疲れていても無理に合わせていないだろうかと少し心配になる。
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