第1章 始業日にて

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【第3節】春彦より 新田くんに呼ばれて思わず顔がほころぶ。人見知りで、友だちも出来ずにいた僕と過ごしてくれる優しい人。太陽みたいだなって思う。 その隣に立つ秋本さんも、やっぱり優しくて自分の意見も主張出来るかっこいい人。凛としてるけど、怖いなんてことなくて、それがすごいなあって思う。新田くんの隣にはやっぱりこういうひとがいるべきなんだろうと頷いちゃう。 二人の名前を呼んで駆け寄ると、風がぶわっと吹いて桜の花を散らせる。なんだかそこに二人が立つと様になる。僕なんかがそこにいることが申し訳なくなる。 「お花見行きたいね!」 秋本さんが桜を見上げながらそう言うと僕に視線を移して微笑んだ。本当は深鈴でいいよって言われたけど、僕はまだその名前を呼ぶのがおこがましい気がしちゃって呼べてない。とってもきれいな名前だと思うから。 新田くんもそう。名字に君呼びなんてされると、なんか慣れなくて恥ずかしいからやめろって言われたんだけど、僕の方こそ名前を呼ぶなんて緊張しちゃってむずかしいや。 「うん、そうだね。みんなでごはん持ち寄って、レジャーシートひいて…うん、きっと楽しいね!僕、玉子焼き作ってくるよ!」 秋本さんも新田くんもうんうんって聞いてくれるから、僕はいつもよりおしゃべりになって、それにあとから気がついて恥ずかしくなる。でも二人は気にすんなというようにおしゃべりを続けてくれる。僕はそれにとっても安心するんだ。 それから他の子も集まって学校に向かって、お花見の日程はラインで決めることになった。
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